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※アフィニトールの結節性硬化症における効能又は効果は「結節性硬化症」です。

脳病変(SEGA、大脳皮質結節、SEN等)

脳病変の症状と発現時期

結節性硬化症患者の約90%に、画像上脳病変が認められます。
結節性硬化症の脳病変には、①上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)、②大脳皮質結節(cortical tuber)、③上衣下結節(subependymal nodule:SEN)、④放射状大脳白質神経細胞移動線があります(表11)~3)
中でも、SEGAは結節性硬化症の死亡の重要な原因とされています4)

また、TSC1TSC2遺伝子の変異のタイプによって臨床症状の発現傾向に関連がみられるという報告5) 6)もあります。

表1 結節性硬化症の脳病変

発現率 特徴
SEGA
(subependymal giant cell astrocytoma)
発現率5~20% 特徴
  • 神経膠細胞の一つである巨細胞性星細胞(アストロサイト)の良性腫瘍である(WHOグレードI)。
  • 側脳室の上衣下層に発生し、モンロー孔付近に局在する。
  • 腫瘍が増大し、モンロー孔を閉塞すると、脳脊髄液がブロックされ水頭症や視力障害などの症状につながる。
写真 結節性硬化症に伴うSEGA 画像1

transverse

写真 結節性硬化症に伴うSEGA 画像2

coronal

写真 結節性硬化症に伴うSEGA 画像3

ノバルティス ファーマ社内資料
※異なる症例の写真です。

大脳皮質結節
(cortical tuber)
発現率95~100% 特徴
  • グリア細胞と神経細胞の増殖、大脳皮質の6層構造の損失によって特徴づけられる、皮質構造の限局性の異常。
  • 胚形成中に形成され、妊娠26週時には胎児MRIにより検出できる。
  • てんかん、精神遅滞や自閉症等を含むTSCの精神神経学的症状と直接関連する。
写真 大脳皮質結節 画像1
写真 大脳皮質結節 画像2

ノバルティス ファーマ社内資料
※異なる症例の写真です。

SEN
(subependymal nodule)
発現率95~98% 特徴
  • 側脳室の上衣下壁に多発する結節である。脳室壁に接して、脳室に突出するように認められることが多い。
  • 年齢が進むにつれて線維性グリオーシスと石灰化が明らかになる。
  • 一般的に精神神経学的症状とは無関係と考えられている。
写真 上衣下結節(SEN) 画像

ノバルティス ファーマ社内資料

Roach ES, et al. J Child Neurol 1998; 13: 624-628
Crino PB, et al. Neurology 1999; 53: 1384-1390

① 上衣下巨細胞性星細胞腫(subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)
SEGAは結節性硬化症に特異的な脳病変で、出生後の比較的早期に認められ(図1)、発現率は調査により異なり5~20%と報告されています。
SEGAの発現部位は、側脳室の上衣下層です。SEGAは良性腫瘍で、通常緩徐に増大するため十分な大きさに達するまでは臨床的に明らかとならないことが多く、定期的なモニタリングが重要となります。なお、小児期には腫瘍が急速に増大することがあるため、特に注意が必要といわれています。

増大すると、てんかんの悪化、局所神経兆候、視力障害、認知障害の増強および行動変化などの臨床症状を引きおこすことがあります。さらにモンロー孔の閉塞による水頭症(図2)や頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔吐、両側性の乳頭浮腫など)の発生から死に至る可能性があります。また、SEGAの3分の1は血管が豊富なため、急速に増大した場合には出血をきたす頻度が高くなります。
SEGAは10~40歳に特徴的な死因であり注意が必要です4) 7)図3)。

図1 脳腫瘍の発現時期
図2 SEGAによる側脳室閉塞で発現する水頭症
図3 脳腫瘍の死亡年齢

② 大脳皮質結節(cortical tuber) 大脳皮質結節は、本疾患の病名Tuberous Sclerosisの由来となった病変で、大脳皮質にできる直径1cm程度から5cm程度までの限局した結節性の病変です。
大脳皮質結節は、結節性硬化症の精神神経学的症状(てんかん発達障害など)と関与しており、結節数が多いほどてんかん発作をおこしやすく発達への影響が強いとされる報告もあります。

③ 上衣下結節(subependymal nodule:SEN)
SENは、側脳室の上衣下壁に多発する過誤腫です。SENは胎児期に発症する結節性硬化症患者のほとんどに存在しますが(図4)、通常は無症状で3)、一般的に精神神経学的症状とは無関係と考えられています。
加齢とともに線維性グリオーシスと石灰化が明らかになるとされています。また、発現部位がモンロー孔の近くであることから、5mm以上になって完全な石灰化を認めない場合は、SEGAに進展する可能性が高まります。

図4 年齢期ごとの上衣下結節(SEN)の発現率

④ 放射状大脳白質神経細胞移動線
大脳白質の移動線は、結節性硬化症患者の約40%に観察されます。放射状の白質のバンドは、MRIやCTなどの画像検査で可視化できます。
これらの画像所見は、神経細胞の移動障害とグリア細胞の発達の分化の異常を示しています。

写真 放射状大脳白質神経細胞移動線 画像

ノバルティス ファーマ社内資料

診断と検査

結節性硬化症の診断基準に用いられる修正Gomez基準において、SEGA、大脳皮質結節、SENが大症状(結節性硬化症に特異性が高い症状)に、放射状大脳白質神経細胞移動線が小症状に挙げられています。

SEGA等の脳病変の疑いがある場合や確定診断の検査には、CTまたはMRI検査が行われます。また、SENはSEGAに進展する可能性があるため、定期的な画像検査により経時的な観察を継続して、増大を早期に発見する必要があります。SENは治療の必要がないのに対して、SEGAは場合によっては腫瘍の増大に伴い、頭蓋内圧亢進や水頭症の原因となるため、臨床上SENとSEGAの鑑別が重要です。しかし、臨床および画像診断上の基準に関してはまだ議論の余地が残されています8)表2)。

表2 SENとSEGAの臨床および画像診断上の基準

基準SENSEGA
臨床症状 ・無症状 ・頭蓋内圧の上昇
・てんかんの悪化
・局所神経兆候
・視力障害
・認知障害の増強および行動変化
発現年齢 ・無症状のまま ・21歳以上で発見されるのは例外的
CT画像 ・高吸収域
・石灰化
・低吸収域あるいはわずかに高吸収域
・まれに薄い石灰化
MRI画像 ・緩和時間に応じ様々な所見
・コントラスト増強はわずか
・T1強調画像 高信号
・T2強調画像 高信号
・コントラスト増強が顕著
経時的な増大 ・なし ・3~4mm/年
直径 ・5mm以下 ・5mmを超える
脳室 ・正常 ・水頭症がよくみられる
好発部位 ・側脳室壁 ・モンロー孔付近

SEN:上衣下結節、SEGA:上衣下巨細胞性星細胞腫

Berhouma M. World J Pediatr 2010; 6: 103-110

日本人結節性硬化症患者におけるSEGA/SENの発現頻度

日本人結節性硬化症患者166人を対象とした疫学調査9)によると、SEGAの発現頻度は2%と、既報にくらべ有意に低頻度でした(p<0.0001、χ2検定)が、SENの発現頻度(SEGAを含む)は77%で差は認められませんでした。年齢期別にみると、SEGAの発現頻度と年齢との関連は認められませんでしたが、SENの発現頻度は年齢とともに低下しました(図5)。

図5 年齢期別のSEGAまたはSENの発現頻度図5 年齢期別のSEGAまたはSENの発現頻度図5 年齢期別のSEGAまたはSENの発現頻度

治療

SEGAに対する治療は、病変の管理と症状の予防を目的としており、外科的切除が第一選択とされています8) 10)図6)。
外科的な完全切除が困難な場合は、ガンマナイフも検討されます。また、結節性硬化症のSEGAの治療薬として、日本でもmTOR阻害薬アフィニトール®(一般名 エベロリムス)が2012年12月に承認され、使用可能になりました(2010年11月にFDAで承認され、その後各国でも承認)。
アフィニトール®のSEGAに対する効果については、こちらをご覧ください。

なお、日本皮膚科学会の「結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン」11) では、SEGAの治療として下記が推奨されています。

●脳腫瘍:外科的切除
●水頭症:シャント術(短絡管手術)
●脳圧亢進症状:シャント術(短絡管手術)、ガンマナイフ

図6 SEGAの治療アルゴリズム

文献
1) Roach ES, et al. J Child Neurol 1998; 13: 624-628
2) Crino PB, et al. Neurology 1999; 53: 1384-1390
3) Curatolo P, et al. Lancet 2008; 372: 657-668
4) Umeoka S, et al. Radiographics 2008; 28: e32
5) 大野耕策. 日小児会誌 2002; 106: 1556-1565
6) Dabora SL, et al.Am J Hum Genet 2001; 68: 64-80
7) Shepherd CW, et al. Mayo Clin Proc 1991; 66: 792-796
8) Berhouma M. World J Pediatr 2010; 6: 103-110
9) Wataya-Kaneda M, et al. PLoS ONE 2013; 8: e63910
10) 金田眞理. 皮膚病診療 2011; 33: 183-191
11) 結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会; 金田眞理, 他. 日皮会誌 2008; 118: 1667-1676

監修:鳥取大学名誉教授 大野耕策 先生

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