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※アフィニトールの結節性硬化症における効能又は効果は「結節性硬化症」です。

発達障害(精神遅滞、自閉症、ADHD)

結節性硬化症ではてんかんを合併する頻度が高く、脳波異常とてんかん発作が抑制できないことによる脳機能の障害により発達障害を発症するリスクが高いと報告されています。ここでは、結節性硬化症に伴う精神遅滞、自閉症、ADHD(注意欠陥多動性障害)についてご紹介します。
てんかんについては、こちらをご覧ください。

結節性硬化症患者の精神・行動上の問題に関する全国的な疫学調査(日本)

日本における1998~2009年の小児慢性疾患の意見書をもとにした全国的な疫学調査で、結節性硬化症患者の精神・行動上の問題の割合が報告されています1)表1)。これらの合併症を有する患者を適切な医療や福祉サービスへつなげて、積極的に発達の評価や療育、精神科的介入を行うためには、結節性硬化症の診断・初期治療にかかわる小児科医、皮膚科医への啓発が重要であることが示唆されています。

表1 結節性硬化症患者における精神・行動上の問題の頻度

精神・行動上の問題割合 人(%)
精神遅滞 719/1,004(71.6%)
重度の精神遅滞 260/1,004(25.9%)
てんかん発作 865/1,007(85.9%)
自閉傾向 206/947(21.8%)
多動 112/771(14.5%)

高橋孝雄.神経・筋疾患の登録・解析・情報提供に関する研究.
平成22年度厚生労働科学研究(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)総括研究報告書.
小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究より作表 

発達障害の発現時期と診断、治療

発達障害は、生下時あるいは出生後比較的早期に認められる重要な症状の一つ(図1)で、初発年齢は精神遅滞では生後4~6ヵ月、自閉症では幼児期とされています2)

精神遅滞や行動障害は、低頻度ではあるものの一般集団でも認められることから、結節性硬化症の診断基準の臨床症状には含まれていません。しかし、精神遅滞や行動障害は結節性硬化症患者の多くに認められることから、専門医と連携して発達訓練や療育に取り組むことが大切です。

図1 精神遅滞の発現時期

TSC遺伝子変異と精神神経学的症状

TSC遺伝子産物であるタンパク質TSC1(ハマルチン)とTSC2(ツベリン)は複合体を形成してmTORの活性を抑制的に制御することにより、大脳皮質発達や成長などのコントロールに重要な役割を果たしています。遺伝子変異によるTSC1/TSC2複合体の機能喪失は、神経細胞およびシナプスの構造や神経伝達に影響を及ぼし、興奮性シグナルと抑制性シグナルのアンバランスだけでなく神経細胞のネットワークに根本的な変化を引きおこす可能性があるとされています(図23)

図2 TSC1/TSC2複合体の機能喪失と罹患しやすい精神神経学的症状との関係

結節性硬化症における精神遅滞

結節性硬化症患者での精神遅滞・学習障害の発現率は表2 4)~8)のとおりで、一般人口にくらべて高い傾向が認められます(表1とは異なる調査)。認知機能障害は中等度から重度で、認知機能障害のリスクはてんかん発作の早期発症、難治性てんかん、点頭てんかんを有する結節性硬化症患者で上昇します。結節数の増加が認知機能障害の転帰と相関していることを示す研究もあります。また、結節性硬化症患者の精神遅滞の度合いには幅があり、IQは重度の障害(平均 IQ30~40)またはごく軽度(平均 IQ93)と二峰性に分布することが示されています9) 10)図3)。結節性硬化症患者の約50%は平均的な知能(IQ>70)ですが、記憶障害や注意欠陥多動性障害など特定の認知機能障害の傾向がある可能性が考えられるとされています。

表2 結節性硬化症患者と一般集団における発達障害の頻度

結節性硬化症患者一般集団
精神遅滞や学習障害 40~70% 1~3%
自閉症 25~50% 1~4%
ADHD 30~60% 5%

Jozwiak S, et al. Eur J Paediatr Neurol 2011; 15: 424-431
発達障害への配慮. 小児てんかんの最新医療 (小児科臨床ピクシス 3), 岡明編著, 五十嵐隆総編集, 中山書店, 2008,p.204
Holmes GL, et al. Epilepsia 2007; 48: 617-630
D’Agati E, et al. J Child Neurol 2009; 24: 1282-1287
太田豊作, 他. Pharma Medica 2012; 30: 15-19

図3 結成性硬化症のIQ分布

結節性硬化症における自閉症

結節性硬化症患者での自閉症の発現率は表24)~8)のとおりで一般人口にくらべて高く(表1とは異なる調査)、結節性硬化症との関連性が確立しています。また、一般集団では男児が自閉症を発症する可能性は女児の4倍であるのに対し、結節性硬化症患者が自閉症となる割合に性差はなく同等です11)。これまでに、結節の存在やてんかん発作の早期発症を含め、自閉症と結節性硬化症の関連を説明するいくつかの仮説が示されましたが、原因は不明のままです。

結節性硬化症におけるADHD(注意欠陥多動性障害)

結節性硬化症患者でのADHDの発現率は表24)~8)のとおりで、一般人口にくらべて高頻度である傾向が認められます(表1とは異なる調査)。大規模研究では、てんかん発作がまったくない場合にくらべ、1回でもてんかん発作の経験がある結節性硬化症の小児患者のほうが多動性障害の発現が有意に高いことが観察されています。一方、ADHDは自閉症をもつ結節性硬化症患者で重篤であることが頻繁に観察されていますが、知能が平均的である結節性硬化症患者でも発症することがあります。また、結節性硬化症におけるADHDの病因はほとんど不明ですが、結節による脳の損傷が、認知および行動障害を引きおこすことが一般的に受け入れられており、てんかんをもつ小児でADHDのリスクが増加することがよく知られています。

日本人結節性硬化症患者における年齢期別の自閉症/自閉症スペクトラム障害、精神遅滞の合併率

2013年に報告された、日本人結節性硬化症患者166人を対象とした疫学調査12)によると、自閉症/自閉症スペクトラム障害の発現頻度は21%、精神遅滞の頻度は42%でした。年齢期別にみると、自閉症/自閉症スペクトラム障害*1、精神遅滞*2の発現頻度はいずれも年齢を経るとともに有意に低下しました(*1:p=0.005、*2:p=0.0004、χ2検定、図4)。
また同調査で、精神遅滞が重症なほど、難治性てんかん*3と自閉症/自閉症スペクトラム障害*3を有する頻度が有意に高いことが示されました(*3:p<0.001、χ2検定、図5)。

図4 年齢期別の自閉症/自閉症スペクトラム障害または精神遅滞の合併率図4 年齢期別の自閉症/自閉症スペクトラム障害または精神遅滞の合併率図4 年齢期別の自閉症/自閉症スペクトラム障害または精神遅滞の合併率
図5 難治性てんかんおよび自閉症/自閉症スペクトラム障害と精神遅滞の関係

参考文献
1) 高橋孝雄.神経・筋疾患の登録・解析・情報提供に関する研究. 平成22年度厚生労働科学研究総括研究報告書.小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究, 2010, p.9
2) 結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会; 金田眞理, 他. 日皮会誌 2008; 118: 1667-1676
3) Napolioni V, et al. Brain Dev 2009; 31: 104-113
4) Jozwiak S, et al. Eur J Paediatr Neurol 2011; 15: 424-431
5) 発達障害への配慮. 小児てんかんの最新医療 (小児科臨床ピクシス 3), 岡明編著, 五十嵐隆総編集, 中山書店, 2008, p.204
6) Holmes GL, et al. Epilepsia 2007; 48: 617-630
7) D' Agati E, et al. J Child Neurol 2009; 24: 1282-1287
8) 太田豊作, 他.Pharma Medica 2012; 30: 15-19
9) Curatolo P, et al. Lancet 2008; 372: 657-668
10) Joinson C, et al. Psychol Med 2003; 33: 335?344
11) Curatolo P, et al. J Child Neurol. 2010; 25: 873-880
12) Wataya-Kaneda M, et al. PLoS ONE 2013; 8: e63910

監修:鳥取大学名誉教授 大野耕策 先生

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