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※アフィニトールの結節性硬化症における効能又は効果は「結節性硬化症」です。

主な腎病変(腎AML)

腎病変の症状と発現時期(図1)

腎病変は結節性硬化症の合併症の中で3番目に多く、結節性硬化症患者の80%以上に何らかの腎病変が認められます。また、10歳以上の死因となりうる病変です1) 2)図1)。
結節性硬化症に特徴的な腎病変としては、腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma:腎AML)、腎嚢胞(renal cyst)、多発性腎嚢胞(multiple renal cysts)、腎細胞癌(renal cell carcinoma)があります。 2013年に報告された、日本人結節性硬化症患者166人を対象とした疫学調査によると、腎病変の発現率は71%、腎AML 61%、腎嚢胞 28%、腎細胞癌 2.6%で、これは既報と同程度の発現率でした(図23)

ここでは、最も多くみられる腎AMLについて紹介します。腎嚢胞や多発性腎嚢胞と腎細胞癌についてはこちらをご覧ください。

図1 腎病変の死亡年齢
図2 年齢期別の腎病変の発現率

腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma;腎AML)

写真 腎血管筋脂肪腫(腎AML) CT画像1

CT

写真 腎血管筋脂肪腫(腎AML) CT画像2

CT

写真 腎血管筋脂肪腫(腎AML) エコー画像1

エコー

Reprinted with permission from John Wiley and Sons.

写真 腎血管筋脂肪腫(腎AML) エコー画像2

エコー

写真 腎血管筋脂肪腫 血管造影図 例

血管造影図

ノバルティス ファーマ社内資料
※異なる症例の写真です。

腎AMLは結節性硬化症患者の70~90%に認められると報告されていますが、調査により発現率はさまざまです4) 5)。初発年齢は乳幼児期のこともありますが、通常3歳以降に認められ、加齢とともに増加します4)図3、図4)。腎臓以外の臓器に発生することは稀ですが、肝臓などにみられる場合もあります。

結節性硬化症に伴う腎AMLの多くは、無症状で血液検査等でも異常が認められませんが、腫瘍径が4cm以上になると腫瘍サイズが増大しやすくなり、側腹痛や腫瘤触知、血尿といった三大徴候が現れます(図56)。増大した腫瘍は自然に退縮することはなく、自然破裂や急性出血による大量出血性ショックや腎機能低下のリスクが高まります。中には腎不全や死亡に至るケースもあるため、定期的なモニタリングが不可欠で、適切なタイミングでの治療介入が望ましいと考えられています。

図3 腎AMLの発現時期
図4 年齢期ごとの腎AMLの発現率
図5 腎AMLの腫瘍サイズ別の臨床症状

腎AMLはPEC(perivascular epithelioid cell)由来の腫瘍で、PEComa familyの代表的な疾患です7)。腎AMLには、①結節性硬化症に伴う腎AML(TSC-AML)と、②結節性硬化症とは無関係に発生する腎AML(sporadic AML: S-AML)の2種類があります。
腎AMLに占める割合は、S-AMLのほうが多く、TSC-AMLは腎AML 全体の20%と報告されています。また、TSC-AMLは両側性かつ多発性に、低年齢で発現するという特徴があります8)~12)。TSC-AMLとS-AMLの特徴を表1・表2に示します。

表1 TSC-AMLとS-AMLの特徴

TSC-AML S-AML p値(X2検定)
平均年齢(歳) 30.3 52.1
腫瘍経(cm) 8.9 5.4
多発性腫瘍(%) 97 13 <0.0001
診断時(%)
 症候性
 急性出血

64
44

73
14

0.2584
<0.0001

Nelson CP, et al. J Urol 2002; 168: 1315-1325

表2 TSC-AMLとS-AMLの特徴

特徴 TSC-AML S-AML
両側性の病変1,2
多発性の病変1
低年齢での発現
(30歳 vs. 52歳)1,3
発見時の腫瘍が大きい
(1.1~16cm vs.
0.08~11.7cm)1,3
リンパ節浸潤3
進行が速い
(TSC-AMLで4cm/年
という報告あり)1,4
出血1,5

1.Nelson CP, et al. J Urol 2002; 168: 1315-1325 2.Harabayashi T, et al. J Urol 2004; 171: 102-105
3.Koo KC, et al. Yonsei Med J 2010; 51: 728-734 4.Henske EP. Pediatr Nephrol 2005; 20: 854-857
5.Franz DN. J Child Neurol 2004; 19: 690-698

日本人結節性硬化症患者における腎AMLの発現頻度

日本人結節性硬化症患者166人を対象とした年齢別の腎AML発現頻度をみると、10~19歳で急激に頻度が高まることが示されました(図6A)。4cm以上の腎AMLは92人中44人(48%)に認められました。10歳未満では0%ですが、10~19歳で24%、20~29歳で50%に認められ、これをピークにその後は低下しました(図6B)(4cm以上の腎AMLに対しては破裂予防のために治療をしていました)。

図6 年齢期別の腎AMLまたは4cm以上の腎AMLの発現率図6 年齢期別の腎AMLまたは4cm以上の腎AMLの発現率図6 年齢期別の腎AMLまたは4cm以上の腎AMLの発現率

診断と検査

腎AMLは、結節性硬化症の診断基準に用いられる修正Gomez基準の大症状(結節性硬化症に特異性が高い症状)に、多発性腎嚢胞は小症状(結節性硬化症に特異性が低い)の一つに挙げられています13)
通常、腎AMLは画像検査(腎臓超音波検査、CT、MRI)で検出することが可能です。
腎臓超音波検査は、腎AMLのサイズの定期検査や、幼児のスクリーニングとして利用されます。結節性硬化症患者では5歳前のベースライン測定が望ましく、腎AMLが発見されなければ2~3年に1回、腎AMLが存在する場合は年1回の測定が推奨されています。CTは腎AMLの診断の決め手となる脂肪を検出することができ、超音波検査よりも感度および特異度が高くなっています。また悪性腫瘍との鑑別にも有用です。
RIは腎障害の改善を可視的に確認できることから、超音波検査後のフォローアップに用いられます。

腎AML破裂の危険因子

腎AMLの破裂は生命予後に影響します。しかし、腫瘍サイズ以外に破裂を予測するための因子は見つかっていません。腎AML患者23人を対象に腎AML破裂の予測因子を検討したわが国の報告(2002年)14)によると、対象患者に見つかった腎AML29個のうち22個(76%)に動脈瘤が形成されていました。そして、腎AML29個のうち破裂した腫瘍8個と破裂しなかった腫瘍21個における腫瘍サイズ*1と動脈瘤サイズ*2を比較したところ、いずれも破裂した腫瘍で有意に大きかったことがわかりました(*1:p<0.01、*2:p<0.05、t検定、図7)。また、腫瘍サイズが大きいほど動脈瘤サイズも大きくなり、動脈瘤サイズが大きいと破裂のリスクが高まることも明らかになりました。

図7 破裂の有無による腫瘍サイズと動脈瘤サイズの比較図7 破裂の有無による腫瘍サイズと動脈瘤サイズの比較図7 破裂の有無による腫瘍サイズと動脈瘤サイズの比較

治療

日本皮膚科学会の「結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン」15)において推奨されている腎AMLの治療方針を表3に示します。定期的な画像検査で、治療が必要と判断された場合には、動脈塞栓術(TAE、図8)、腎部分切除術(表4)、腎全摘除術などが適用されます。
腫瘍の大きさが4cm以上か否かが治療介入の1つの目安となります6)が、4cm以上の腎AMLすべてに治療介入するわけではなく、自覚症状の有無や腫瘍のできている場所、その他の結節性硬化症に伴う合併症、腎機能の温存、患者の妊娠希望の有無などを考慮して、総合的に判断することが大切です。なお、腎AMLの治療方針の決定に際しては、泌尿器科、腎臓内科、放射線科などの関連診療科の専門医と連携して取り組むことが重要です。

また、成人の結節性硬化症に伴う腎AMLの治療薬として、日本でもmTOR阻害薬アフィニトール®(エベロリムス)が2012年12月に承認され、使用可能になりました(米国では2012 年4月に承認)。アフィニトール®の腎AMLに対する効果については、こちらをご覧ください。

表3 結節性硬化症に伴う腎AMLの治療・モニタリング方針

腫瘍の大きさ/自覚症状 治療方針
a) 腫瘍経;
4cm未満/自覚症状なし
年1回の画像検査
b) 腫瘍経;
4cm未満/自覚症状あり
症状が持続 d) に準ずる
症状が消失 6ヵ月毎の画像検査
c) 腫瘍経;
4cm以上/自覚症状なし
腫瘍増大傾向なし 6ヵ月毎の画像検査
腫瘍増大傾向あり d) に準ずる
d) 腫瘍経;
4cm以上/自覚症状あり
腫瘍の塞栓療法(TAE)
外科的腫瘍摘出術、腎部分切除術など

結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会; 金田眞理, 他. 日皮会誌 2008; 118: 1667-1676

図8 腎動脈塞栓術

表4 腎部分切除術の利点と欠点

利点 欠点
利点 腫瘍を除去することにより
  • 症状がなくなることに加え、合併症(出血、痛み、破裂や悪性転換の可能性)のおそれの除去
  • 腎機能の保存
  • 癌の存在の疑いが低下
欠点
  • 開腹手術に伴う合併症(出血、痛み、血液凝固、感染症、尿瘻)と回復
  • 腎機能の損失および低下
  • 腎AMLとともに正常組織を除去
  • 麻酔下での治療
  • てんかんや腎機能障害を有する患者に対する危険性
  • 認知機能障害患者に対する入院の問題
  • 腎臓損失の可能性
  • 透析の必要性
  • 死亡のリスク

参考文献
1) Umeoka S, et al. Radiographics 2008; 28: e32
2) Shepherd CW, et al. Mayo Clin Proc 1991; 66: 792-796
3) Wataya-Kaneda M, et al. PLoS ONE 2013; 8: e63910
4) Curatolo P, et al. Lancet 2008; 372: 657-668
5) Ewalt DH, et al. J Urol 1998; 160: 141-145
6) Oesterling JE, et al. J Urol 1986; 135: 1121-1124
7) Zhou M, et al. Uropathology: A Volume in the High yield pathology 2012; 317-318
8) Nelson CP, et al. J Urol 2002; 168: 1315-1325
9) Harabayashi T, et al. J Urol 2004; 171: 102-105
10) Koo KC, et al. Yonsei Med J 2010; 51: 728-734
11) Henske EP. Pediatr Nephrol 2005; 20: 854-857
12) Franz DN. J Child Neurol 2004; 19: 690-698
13) Roach ES, et al. J Child Neurol 2004; 19: 643-649
14) Yamakado K, et al. Radiology 2002; 225: 78-82
15) 結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会; 金田眞理, 他. 日皮会誌 2008; 118: 1667-1676

監修:鳥取大学名誉教授 大野耕策 先生

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