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※アフィニトールの結節性硬化症における効能・効果は「 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫及び結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫」です。

肺病変(肺LAM)

肺病変の症状と発現時期

結節性硬化症の肺病変には、肺リンパ脈管筋腫症(pulmonary lymphangioleiomyomatosis:肺LAM)とMMPH(multifocal micronodular pneumocyte hyperplasia)があります。ここでは、肺LAMについて解説します。

写真 肺病変 例

ノバルティス ファーマ社内資料

日本では結節性硬化症患者の26~40%に肺LAMが認められるという報告があります(難病情報センターホームページ、2013年12月現在)。患者数は2,000~4,000人と推定されています。結節性硬化症の発症に男女差はありませんが、結節性硬化症に伴う肺LAM の罹患率には明らかな性差が存在し、そのほとんどが女性です。肺LAMは女性の結節性硬化症患者の約40%1) 2)に発現し、特に妊娠可能な年齢の女性に好発します(図1)。40歳以上の結節性硬化症患者(特に女性)の主な死亡原因の一つであり、進行性で予後が悪いとされています(図23) 4)
2013年の報告5)によると、日本人の結節性硬化症患者95人における肺病変の頻度は75人(79%)でした。内訳は、肺LAM 37人(39%)、MMPH 67人(71%)で、両方を合併している患者が29人(31%)でした。肺LAMは男性より女性で発現頻度が有意に高く(p=0.0015、Wilcoxon検定)、年齢期別にみると、20歳以降に発現頻度が上昇し、40~49歳でピークに達しました(図3A)。MMPHは年齢期や性別にかかわりなく発現しており(図3C)、肺LAMを有する患者の78%がMMPHを合併していました。なお、肺LAMとMMPHを合併していた女性患者は28名(42%)、男性患者は1名(3.6%)でした(図3B)。

肺LAMの全国疫学調査6)の推計によると、わが国における肺LAMの有病率は、2003年の100万人当たり1.2~2.3人が2006年では100万人当たり1.9~4.5人と、増加が認められています。また、2003年と2006年に実施された同調査による10年生存率は85%と報告されています。この調査には結節性硬化症に伴う肺LAMも含まれていますが、頻度が約16%と低いため、結節性硬化症に伴う肺LAMが比較的軽症のため診断に至らない可能性やスクリーニング不足などが指摘されています。

図1 肺LAMの発現時期
図2 肺LAMの死亡年齢
図3 男女別・年齢期別の肺LAMの発現率

LAMは、平滑筋様細胞(LAM細胞)が肺や体軸性リンパ節等で異常増殖する全身性疾患で、肺では多発性の嚢胞が形成されるという特徴があります。
肺LAMの初期は通常無症状ですが、進行性であり、肺におけるLAM細胞の増殖に伴って労作時呼吸困難、繰り返す気胸、気胸に伴う胸痛、咳、痰、血痰などの呼吸器症状を呈し、経年的に緩徐に悪化して、最終的には呼吸不全および死亡に至る予後の悪い合併症です。
肺LAMの進行速度には個人差があり、臨床像や経過は症例ごとに多様で、時に乳び胸や血痰の症状が出ることもあります。また肺LAMは高頻度に腎AMLを合併します。

結節性硬化症に伴う肺LAM(TSC-LAM)と孤発性の肺LAM(S-LAM)

肺LAMには、結節性硬化症に伴う肺LAM(TSC-LAM)と孤発性の肺LAM(S-LAM)の2種類があります。結節性硬化症の診断基準7)を満たすか否かでTSC-LAMとS-LAMとが区別され、TSC-LAMはS-LAMの5~10倍の頻度であると推定されています。
一般的にTSC-LAMは、S-LAMにくらべて軽症かつ進行が遅く、労作時呼吸困難よりも気胸が多く、乳び胸水・腹水は少ないとされています。また、両者の肺病変には病理組織学的差異は認められていません。

診断と検査

肺LAMは、結節性硬化症の診断基準に用いられる修正Gomez基準7)の大症状(結節性硬化症に特異性が高い症状)の一つに挙げられています。
また、肺LAMの多くは腎血管筋脂肪腫(腎AML)を合併することから、診断基準では「肺LAMと腎AMLの両症状がある場合は、Definitive TSCと診断するには他の症状を認める必要がある」という注意事項が明記されています。

2005年に呼吸不全に関する調査研究班が作成したLAMの診断基準(図4)では、①組織診断確実例、②組織診断ほぼ確実例、③臨床診断ほぼ確実例の3つに分類されています。

図4 LAMの診断基準

肺LAMの検査として、単純胸部X線、肺高分解能胸部CT(HRCT)、精密肺機能検査、細胞診が行われます。早期に結節性硬化症における肺病変の有無を検出するためには、肺HRCT検査と精密肺機能検査が有効です。

肺HRCT検査では両側対称性に肺実質の増殖、嚢胞やhoneycomb像などの、嚢胞性変化の有無が確認できます。精密肺機能検査ではFEV1、FEV1/ FVC、DLcoなどの呼吸機能をモニターします。また、細胞診は胸水や腹水の乳び中に検出されるLAM細胞クラスターを用いることにより、組織生検を行わない、侵襲性の低い診断ができるとされています。

治療

日本皮膚科学会の「結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン」8)では、肺LAMの治療として下記が推奨されています(表1)。肺LAMの治療方針は、労作時呼吸困難の有無、気胸の合併やその状態にもとづいて決定されますが、現時点では肺LAMの進行を確実に防止できる有効な治療法はありません。
なお、肺LAMの実際の治療は、呼吸器内科専門医による管理が望ましいとされています。

表1 結節性硬化症に伴う肺LAMの治療方針

治療適応 治療方針
労作時呼吸困難(-)年1回のフォロー
 HRCT、精密肺機能検査(FEV1、FEV1/FVC、DLco)
労作時呼吸困難(+)治療を検討
 ホルモン治療
 1.LH-RHアゴニストによる偽閉経療法(GnRH療法)
 2.プロゲステロン療法
 3.外科的卵巣摘出術(1.2.有効時)
  *更年期障害、骨粗鬆症、心疾患に注意
気管支拡張療法
 抗コリン薬、β2刺激薬、除放性テオフィリン
常時酸素療法・内科的治療が無効肺移植
気胸安静、脱気、外科的治療
繰り返す気胸胸膜癒着術(内科的、外科的)
外科的臓側胸膜癒着術
 *胸膜癒着術の既往は肺移植適応外

HRCT:高分解能胸部CT

結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会; 金田眞理, 他. 日皮会誌 2008; 118: 1667-1676

参考文献
1) 難病情報センターホームページ(2013年12月現在)
2) Franz DN, et al. Am J Respir Crit Care Med 2001; 164: 661-668
3) Umeoka S, et al. Radiographics 2008; 28: e32
4) Shepherd CW, et al. Mayo Clin Proc 1991;66: 792-796
5) Wataya-Kaneda M, et al. PLoS ONE 2013; 8: e63910
6) 林田美江. 日本胸部臨床 2011; 70: 992-1000
7) Roach ES, et al. J Child Neurol 2004; 19: 643-649
8) 結節性硬化症の診断基準・治療ガイドライン作成委員会; 金田眞理, 他. 日皮会誌 2008; 118: 1667-1676

監修:鳥取大学名誉教授 大野耕策 先生

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